アナログとデジタルのキャッチボール

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情報化社会

文字で直接情報を伝えるのは太古の昔から続いてきた伝統で、今後も廃れる事はないでしょう。ですが、それ以外の方法で情報を送る必要が発生した時はどうするでしょうか?狼煙、手旗信号、モールス信号、色々ありましたが現代で普及度が高いのは「バーコード」ですね。最近でこそ画像認識技術と言う言葉もメジャーになりつつありますが、実装にコストが掛かるしまだまだ発展途上です。

バーコード

枯れた技術で、情報を確実に読み取れる方法としてメジャーなのがバーコードです。太さの違う線(バー)を並べてコードにしている物で、現在流通している商品の殆どに入っています。濃い色と薄い色の判別が出来れば良いので性能の低いカメラでも十分に読み取れますし、性能の低いコンピュータでも解読処理が出来ます。実はバーコードの下に数字が書いてありますが、そちらは人間用なので読み取る時には意味はありません。数字が書いてあるのでバレバレですが、数字が十数個しか格納出来ません。日本流通商品の場合(JANコードまたはEANコード)先頭の数字が49や45が日本の識別コードなのは有名かと思います。
利点は
  • 何十年も世界で使われているのでどこでも使える
  • 印刷などを使い、簡単かつ安く導入出来る
  • 読み取り装置も安く導入出来る
欠点は情報量が少なすぎる事。
例えば4912345987655の場合(※例なので対応コードは出鱈目です
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  • 49=日本の事業者
  • 12345=株式会社enish
  • 98765=12オーディンズ
  • 5=チェックデジット
のように登録して使用しますが、対応表が無いと日本の製品という事しか分かりません。もう少し情報を入れたい書籍などでは複数のバーコードを使う事になります。

QRコード

最近のスマホ普及のおかげで世界に広がってきたQRコードという物があります。日本電装株式会社※現在開発部門は子会社のデンソーウェーブに移転)が開発した2次元バーコードです。元々工場での管理の為に作られた物なので、情報量が多く・早く・正しく読めるのが特徴です。日本電装の特許ですが、ありがたい事に特許権を行使しないと公言しているので法人・個人問わず自由に使えます。(※ただし、QRコードの規格から外れた物などについては特許権の行使もありえます)
特徴は
  • 20年の実績
  • 印刷などを使い、安くて簡単な方法で導入出来る
  • 読み取り装置の準備も比較的導入しやすい
  • 大量のデータを入れられる
  • ある程度のエラー訂正が可能
バーコードに比べて欠点が無いように見えますが、少しずつ普及しているとはいえバーコードほどのシェアは無く、既にバーコードで世界的なコード割り振りが行われているので置き換えがあるとしても当分先でしょう。また2次元を識別するカメラやデコードするコンピュータの価格はバーコードの物より高くなります。(※バーコードはカメラじゃなくても読みとれます)しかし情報量とエラー訂正は優れているので共存が続きそうです。
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このQRコードに含まれる内容は「株式会社enish/12オーディンズ/http://12odins.com/」です。

デザインの課題

実際の商品の場合、裏面など目立たない処にバーコードが入れられる事が多いです。写真やイラスト、タイポグラフィーなどと違い、バーコードは意味のあるデザインとしてなかなか溶け込めません。デザイナーが頑張っても、レイアウトやデザインの異物として鎮座してしまいます。邪魔だから排除したいけど、データの為に入れなくてはならない。何とかしたいと考えますよね?

バーコードでの対応

このバーコードがバーコードとして正しく振る舞う為には線の太さと間隔が保証されなくてはなりません。逆に言えばコードとする個所を保証してやれば、その他は何でも良い。それをデザインに取り込んだデザインバーコード(俗称)があります。
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バーコードを無くす事は出来ませんが、上手くデザインすれば少しお洒落な見た目に出来るかもしれませんね。

QRコードでの対応

こちらもバーコードと同様、QRコードとしてのシンボルとパターンが保証されている必要があります。ただ、QRコードにはエラー訂正符号が導入されているのでパターンが多少壊れていても読めてしまいます。パターンの背景に絵を入れたり、パターンの一部を消して絵や文字を入れてもエラー訂正が可能な範囲であれば読めてしまうのです。(※エラー訂正がどこまで出来るかはコードの状態や読み取り機次第ですので確実性は無くなります)ですがデンソーウェーブは、このような規格に準拠していないコードについてはQRコードと呼ぶ事は出来ず、特許権の行使も有り得るとの立場です。(※コピーコントロールCD(CCCD)はCDの規格に準拠していないのでCDとは名乗れないのと同様のケースです)個人利用なら兎も角、業務利用の場合はデンソーウェーブに問い合わせる必要がありそうですね。
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この改変QRコードでもエラー訂正が出来れば「株式会社enish/12オーディンズ/http://12odins.com/」と読めます。

発展途上の埋め込みコード

バーコードとQRコードがあれば大抵の事は足りてしまいそうですが、更なる利便性の為に新しいコードが研究・開発されています。

カラーバーコード

バーコードやQRコードに色情報を加えた物です。元々のバーコードは黒白でも赤白でもコントラストが分かれば使えるので、任意の1色で作られています。単純計算ですが、黒白2色から赤緑青白4色になれば情報は倍です。情報量は増えますが、幾つかの問題点があります。
  • 多色印刷のコスト増
  • 読み取り装置の開発やコスト、普及率
  • エラー率
  • 派手になっても同じデザイン
あと重大な問題は、具体的な仕様が事実上固まってない事です。
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イメージ例

カメレオンコード

QRコードのような2次元マトリクス形式のカラーコードで、株式会社シフトの開発製品です。ライセンスを取得すれば利用可能ですが、QRコードのようにフリーではないので、現状では工場や物流などでの導入に限定されています。QRコードより早く読み取れ、複数のコードの同時読み取りも出来るようです。
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面白い特徴としては、色のパターンさえ合っていればよいので色のブロックは四角じゃなくても大丈夫という事でしょう。赤いリンゴ黄色いバナナ青いアイスのパターンをマップチップのように並べても機能するのでデザインに遊びの余地はありますね。
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スマートアイコン

カラージップ株式会社が提供しているスマートアイコンも2次元マトリクス方式です。色のブロックを2次元マトリクスに並べるというのはカメレオンコードと同じですが、5x5等の少ないパターンで済むのが特徴です。また追加費用は発生しますが必要に応じてパターン数変更も対応可能となっています。実際にデータが入ってる訳ではなく識別コードだけで、実際のデータはサーバーから持ってくる仕組みです。バーコードのコードと企業の対応表や短縮URLのような物と考えてよいのかもしれませんね。サーバーにデータを置くのでデータ量は無制限でデータもセキュア、カメレオンコードより小さいアイコンなので他のデザインの中に紛れ込ませやすいです。識別コード自体は5x5で170億通りだそうですから、読み取りエラーが無ければ重複の心配はないでしょう。ただ、サーバーへのアクセス手段が必須なので、スタンドアロンでは使えないのが気になる所です。
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デザインの自由度は高く、任意のマトリクス位置にその色がある程度入っていれば認識されるので、カメレオンコードのようなマップチップ配置でも大丈夫ですが普通の絵を使う事も出来ます。
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この絵を上図の5x5識別コードとして認識しますので、人間に気づかれない埋め込みコードのデザインが可能です。エンドユーザーは無料で使え、情報発信者側は利用料が発生します。万単位で色々な利用料金が取られるので主に企業向けに提供するシステムですが、開発企業にSDKをライセンスしており、独自機能開発方面に参加する事も可能になっています。大日本印刷との提携も行っているので、印刷方面の連携は取りやすい下地が出来てきています。

カラービット

ビーコア株式会社が開発したカラービットは1次元方式です。一見するとバーコードに退化していると感じてしまいますが、レイアウトの自由度が特徴です。一本の線上であれば全てデータですので、紙が曲がっていようが線が曲がっていようが問題なく、またブロックが四角でも丸でも棒でも模様でも大丈夫です。つまり平面の紙ではなく衣類や腕輪の様な立体的な物、柔らかい物にデザインとして入れる事が可能なシステムですので、管理業務の現場からエンターテインメントまで違和感なく導入されています。採用事例も増えてきているので、検索してみると面白い発見があるかもしれません。
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情報伝達にも色々

紙などに書かれた情報元としてのバーコードの種類を挙げてきましたが、その親戚みたいな技術も沢山ありますので面白そうなのを幾つか紹介します。

ARマーカー

カメラで撮影した風景の中に映るマーカーを認識させるための方式で、黒枠で位置を、内側の領域のパターンで内容を認識させます。風景の中のマーカーの座標や傾きを認識させる事で、マーカーに連動させて3DCGなどをオーバーラップ表示させたりします。これはARToolKitでの制約ですのでデザインなどに色々制約事項もありますが、マーカーレスの方法も用意されています。今回取り上げた各種コード(カラービットなど)との併用など、もっと応用事例は増えるように思います。
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RFID

今までのは全てカメラなどの光学系に依存する方法でした。RFIDは光学系に依存しない別のシステムですが、同じく製品に情報を埋め込む物です。文字通り電波によって情報をやり取りする仕組みです。もうすっかりお馴染みとなったJR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)のSuicaや楽天株式会社のEdyなどが代表例ですね。これらにはSONY(ソニー株式会社)が開発したFelicaを使用しています。NFCも似たようなシステムで、統合化が進んでいます。Suicaのようなカード形状しか見た事が無い人も多いと思いますが、Felicaの半導体チップとアンテナパターンさえあれば、大日本印刷株式会社のSmart-Jacketのように形状は問いません。同様に株式会社タイトーのアーケード用ドライブゲーム「バトルギア3」「バトルギア4」でも、RFIDはカードではなく鍵の形をしています。このRFIDが入っている鍵を刺し回してエンジン始動(演出)させると筐体と通信を行い、その鍵に対応した自分だけの車を認証して使える仕組みでした。そしてSuicaのキャッチコピーが「タッチアンドゴー」などと言われる通り近距離無線通信技術です。タッチする必要はないのですが、通信する間だけ近距離に一定時間置かせる為にタッチという動詞が入ったようですね。読み取り端末から電磁波を発する事でアンテナコイルから電力を取得し、その間に自分のIDを返却しています。電源などは元々何もないので半永久的に使えます。残高などの情報はIDに関連した情報にアクセスする必要があるので、仕組みは(無理やりな理屈ですが)スマートアイコンが一番近いかもしれません。RFID全般ですが、無線を使うので見えなくても良いという利点を活かして、物流などの活用例があります。身近な例では回転寿司の皿への導入でしょうか?食べた枚数と金額を一括で集計出来るので導入が進んでいます。アーケードゲームのトレーディングカードではカードに対応したデータや、カードを物理的に置いた場所などが取得出来る仕掛けになっています。かなり便利なシステムですが、紙に印刷出来るバーコードと違い半導体製品ですので、どうしてもコストが高くなってしまう欠点もあります。ですが、半導体プロセスの小型化やフィルム等への電子回路生成技術、そして量産効果によって価格も落ち着いてきたようです。価格がネックで参入出来ない領域への応用に期待したいと思います。
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東日本旅客鉄道株式会社 / Suica
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楽天株式会社 / 楽天Edy
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大日本印刷株式会社 / Smart-Jacket
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株式会社タイトー / BattleGear4

フローサインライト

富士通株式会社が開発したLED照明ソリューションです。照明を当てた物体をカメラで撮影する事で埋め込まれた情報を取得出来ます。バーコードのように印刷もせずRFIDの埋め込みもいらないので、商品自体への細工は要らなくなります。照明を当ててるだけなので買い物用バーコードの代わりにはなりませんが、美術品などの説明用QRコードの代替に使うと利便性が高そうです。光ですのでQRコードのように近づく必要がなく、対象物さえ見えれば混雑していても使えるのがメリットでしょう。人間の認識外の変動を利用しているので、見ている人には影響がありません。
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ピカリコ

カシオ計算機株式会社が開発した光通信ソリューションです。3色のLEDを使い明滅による情報送信が出来ます。送信側のハードウェアは廉価に出来るので発信装置としては導入コストが低く、また電波の制限がある場所での無線情報発信手段としてのメリットもあります。またLEDなどのハードウェアの代わりに、動画への埋め込みも可能ですので動画サイトやデジタルサイネージへの導入も可能になっています。可視光なのでバーコードのように視認は出来てしまいますが、幅広い運用が出来る汎用性の高さがあります。
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デジタルアプリが見る夢

従来のバーコードはちょっとした情報をアナログ媒体に埋め込む技術です。恐らく今後も長い期間君臨するでしょうが、バーコードリーダーのメーカーやバーコード用アプリ以外で関わる事はありませんでした。しかしこれらの新技術が今後、どのような応用事例に化けるかを考えるとワクワクしませんでしょうか。広告やマーケティング、ARやVR、アトラクションや展示イベント、ゲームや福祉、まだまだネタは出てきますね。